「自社のミッション・ビジョン・バリューを整理したい。でも、何から始めればいいのかわからない」
「以前MVVを策定したものの、社員に浸透していない」
こうした悩みを持つ経営者や事業責任者は少なくありません。
MVVは、企業の存在意義や目指す未来、大切にする価値観を言葉にしたものです。しかし、きれいな言葉をつくることだけが目的になってしまうと、経営や日々の業務とのつながりが弱くなります。
MVV策定で重要なのは、言葉の完成度だけではなく、経営判断や社員の行動に活用できる状態をつくることです。
この記事では、MVVの基本的な役割から、策定・見直しの判断方法、具体的な5つのステップ、外部支援を活用する際の判断基準まで整理します。
1.MVVとは?Mission・Vision・Valueの役割
MVVとは、Mission(ミッション)、Vision(ビジョン)、Value(バリュー)の頭文字を取った言葉です。
一般的には、次のように整理できます。
| 要素 | 基本的な役割 | 答える問い |
|---|---|---|
| Mission | 企業の使命・存在意義 | 私たちは何のために存在するのか |
| Vision | 目指す将来像 | どんな未来を実現したいのか |
| Value | 大切にする価値観・行動指針 | 何を大切にして行動するのか |
ただし、企業によって定義や使い方には違いがあります。すべての企業が同じ形式に合わせる必要はありません。
大切なのは、3つの言葉が互いにつながり、会社として何を目指し、何を優先し、どう行動するのかを示していることです。
2.MVVを策定・見直すべきタイミング
MVVは、創業時に必ず完成させなければならないものではありません。
むしろ、事業や組織の変化によって、改めて整理する必要が生まれることがあります。
例えば、次のような場面です。
- 創業・独立時: 経営者の考えを、事業の判断軸として整理したい
- 事業転換・新規事業立ち上げ時: 従来の使命や将来像と新しい事業の関係を明確にしたい
- 組織拡大時: 経営者の考えを社員と共有し、判断基準を揃えたい
- 採用・組織課題が生じた時: 企業が大切にする価値観を具体化したい
- リブランディング時: 企業の目指す方向と、顧客からの認識を見直したい
一方、社内にMVVが浸透していないからといって、必ずしも言葉そのものを変更する必要はありません。
MVVを見直す前に確認したい4つのこと
| 現在の状況 | 考えられる課題 | 優先して検討すること |
|---|---|---|
| 現在の主力事業や顧客をMVVで説明できない | 言葉と事業の方向性がずれている | MVVの内容・位置づけの見直し |
| 経営者自身が判断の場面でMVVを使っていない | 経営者の納得感や運用に課題がある | 経営方針との整合性を確認 |
| 社員は意味を理解しているが、仕事で使えていない | 行動への落とし込みが不足している | 具体的な行動例や判断基準の設計 |
| 社員がMVVの存在をほとんど知らない | 伝達や共有の機会が不足している | 社内コミュニケーションの見直し |

これは原因を断定する診断ではなく、課題を切り分けるための整理です。
例えば、MVVの内容は今の事業に合っているのに、社員が日々の仕事で使えていない場合、言葉を作り直すだけでは問題は解決しません。
MVVが形骸化する原因は、言葉そのものだけとは限りません。言葉を変える前に、なぜ使われていないのかを確認することが大切です。
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3.MVV策定で失敗しやすい3つのこと
① 経営者だけで言葉を完成させてしまう
MVVは経営の意思を反映するものであり、最終的な責任は経営者にあります。
ただし、経営者だけで策定し、完成後に社員へ発表するだけでは、現場での理解や活用につながりにくい場合があります。企業の状況に応じて、社員との対話を取り入れることが有効です。
② どの会社にも当てはまる言葉になる
「社会に貢献する」「お客様を大切にする」「挑戦し続ける」。
どれも大切な考え方ですが、抽象的な言葉だけでは、その企業ならではの意思や特徴が伝わりにくいことがあります。
なぜその言葉を選んだのか。どのような経験や事業上の課題から生まれたのか。
背景まで説明できることが重要です。
③ 策定後の活用方法が決まっていない
MVVをホームページや会社案内に掲載しただけでは、社員の行動は自動的には変わりません。
策定段階から、採用、営業、商品開発、組織運営など、どの場面で使うのかを考えておく必要があります。
4.MVV策定の進め方|実務で押さえたい5つのステップ
MVV策定に唯一の正解があるわけではありません。ここでは、実務で進めやすい基本的な流れを紹介します。
STEP 1.企業の歴史・現在地を整理する
創業の背景、これまでの転機、事業の強み、顧客に提供している価値、組織の特徴を整理します。
経営者に加え、必要に応じて事業や現場をよく知る社員へのヒアリングも有効です。
整理するもの: 企業の歩み、転機、強み、顧客から評価されている価値。
STEP 2.経営者の意思と目指す未来を掘り下げる
「なぜこの事業を続けているのか」
「どんな未来を実現したいのか」
「成果を上げるうえで、何を大切にしたいのか」
こうした問いを通じて、経営者自身の意思を整理します。
整理するもの: 企業の存在意義、目指す将来像、譲れない価値観。
STEP 3.Mission・Vision・Valueを言語化する
収集した情報をもとに、企業の使命、目指す未来、行動の価値基準を言語化します。
重要なのは、言葉の美しさだけではありません。
経営者自身が納得できるか。社員が意味を理解できるか。事業上の判断に使えるか。
この3つを確認します。
整理するもの: MVVの文案と、それぞれの言葉に込めた意味や背景。
STEP 4.社員との対話を通じて具体化する
策定したMVVについて、社員がどのように理解し、日常業務に結びつけられるかを確認します。
例えば、「挑戦」をValueに掲げるなら、自社にとって挑戦とはどのような行動を指すのか。
具体的な行動例まで話し合うことで、抽象的な言葉を実務に近づけられます。
整理するもの: MVVを体現する行動例、社員との認識の違い、必要な説明内容。
STEP 5.経営と日常業務に組み込む
策定したMVVを、実際の業務に反映します。
例えば、採用面接ではValueに関連する行動経験を質問する。新規事業の検討ではVisionとの整合性を確認する。営業活動ではMissionと提供価値のつながりを説明する。
こうした使い方を決めておくと、MVVが経営や組織の中で機能しやすくなります。
整理するもの: 活用する業務、具体的な判断場面、運用の担当者や確認方法。
なお、策定に必要な期間や参加人数は、企業規模、経営陣の合意状況、ヒアリング対象、社内浸透まで含めるかによって異なります。
最初から大規模なプロジェクトにするのではなく、自社に必要な範囲を見極めて進めることが大切です。
5.MVVとブランド戦略は、どうつながるのか
MVVとブランド戦略は密接に関係していますが、同じものではありません。
MVVは、企業が何のために存在し、どこを目指し、何を大切にするかという経営の土台です。
一方、ブランド戦略では、市場・顧客・競合を踏まえ、どのような独自の価値を提供し、顧客からどう思われたいかを明確にしていきます。
ここで重要になるのが、ブランド・アイデンティティです。
ブランド・アイデンティティとは、自社のブランドが「顧客からどう思われたいか」を定めたものです。顧客が実際に抱いている印象であるブランド・イメージとは区別する必要があります。
例えば、MVVで「挑戦する企業を支える」という方向性を掲げていても、それだけでは顧客にとっての具体的な選択理由は決まりません。
誰を顧客とするのか。競合と比べたとき、どのような価値を強みとするのか。顧客からどのように認識されたいのか。
これらを、ポジショニングやブランド・アイデンティティの設計を通じて具体化する必要があります。
詳しくは、ブランド・アイデンティティとは?の記事で解説しています。
さらに、ブランド戦略を定めた後は、その内容をクリエイティブブリーフに落とし込み、具体的な表現を開発し、発信する媒体を設計していきます。
その過程で、ロゴやWebサイトだけでなく、営業、採用、商品・サービスなど、さまざまな接点に一貫性を持たせることが重要です。
こうした顧客接点の設計については、ブランド体験の考え方でも整理しています。
MVVはブランド戦略の重要な土台になり得ますが、MVVを策定すること自体がブランディングの完成ではありません。
6.MVV策定は自社で行う?外部支援を活用する?
MVVは、必ずしも外部のコンサルティング会社に依頼しなければ策定できないものではありません。
経営者の考えが明確で、社内に対話を進められる人材がいる場合は、自社で進めることも十分可能です。
一方、次のような場合には、外部支援が役立つことがあります。
- 経営者の考えが多岐にわたり、整理しきれない
- 経営陣の間で目指す方向性が揃っていない
- 社内だけでは議論が既存の考え方に偏りやすい
- MVVだけでなく、ブランド戦略や顧客への伝え方まで一貫して整理したい
- 策定後の社員浸透や具体的な行動への落とし込みも検討したい
外部パートナーを選ぶ際に大切なのは、単に魅力的な言葉を提案してくれるかどうかではありません。
経営者や社員の中にある価値観や意思を引き出し、事業や組織の実態と結びつけて整理できるか。
さらに、誰が議論に参加し、何を成果物とし、策定後の活用をどこまで支援するのかも確認したいポイントです。
支援会社を比較する際の考え方は、ブランディング会社の選び方で詳しく解説しています。
なお、MVVそのものを変える必要がない場合には、新たな策定プロジェクトではなく、社内浸透やブランド体験の見直しから着手する方が合理的なこともあります。
7.LSC Brandingが考えるMVV策定支援
ラテンサムライでは、MVVをつくること自体をブランディングのゴールとは考えていません。
私たち自身も、MVVは「きれいな言葉を作るため」ではなく、日々の判断軸として設計しています。
Visionは、私たちが実現したい社会の方向。
Missionは、そのためにLSCが果たす役割。
Valuesは、日々の仕事で迷ったときに立ち返る行動基準です。
LSCでは、次のように定めています。
Vision
挑戦する企業から、日本をもう一度面白くする。
Mission
ブランドの価値を、誰かの日常を豊かにする力へ。
Values
一点突破 / そもそもを問う / 成果にこだわり抜く
例えば「そもそもを問う」は、依頼された施策をそのまま実行するのではなく、「本当に解くべき課題は何か」を一度立ち返って考えるための基準です。MVVは、掲げるだけではなく、こうした日々の判断や行動に使えて初めて機能すると考えています。
この言葉は、私たちがどのような企業を応援し、どのような未来に貢献したいのかを示すものです。
ただし、Visionを掲げることと、顧客に対して具体的にどのような価値を提供するかを設計することは別の課題です。
企業の意思や目指す未来を、社外にも伝わる言葉として表現する際には、ブランドステートメントの考え方も重要です。詳しくは、ブランドステートメントとは?で解説しています。
私たちは、企業の中にある思いや強み、顧客に提供している価値を整理し、それを経営とブランドの判断軸につなげることを大切にしています。
そのために、まずは現在の課題を確認します。
必要なのはMVVの新規策定なのか。既存MVVの見直しなのか。それともブランド戦略や顧客接点への実装なのか。
状況によって、取り組むべき範囲は異なります。
すべてを一度に変えるのではなく、今やるべきことと、今はやらなくてよいことを整理する。
これも、LSC Brandingが大切にしている考え方です。
まとめ|MVVは「つくる」より「使える状態にする」ことが重要
MVV策定では、次の4つを意識することが大切です。
- 企業の歴史や経営者の意思を掘り下げる
- 抽象的な言葉だけでなく、その企業らしい意味を明確にする
- 言葉の問題と運用の問題を切り分ける
- ブランド戦略や経営判断に活用し続ける
MVVは、企業の姿勢を社外へ伝える言葉であると同時に、社内の意思決定を支える基準にもなります。
言葉を完成させることよりも、その言葉が経営と現場で機能することを目指しましょう。
自社のMVVを策定・見直したい方へ
「今のMVVが事業の実態と合っているかわからない」
「社員に浸透せず、形だけの言葉になっている」
「MVVの見直しとブランド戦略、どちらから着手すべきか迷っている」
こうした段階でも構いません。
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現在の課題を整理し、MVVの策定・見直しが必要なのか、あるいは別の取り組みを優先すべきなのかを一緒に考えます。
まだ発注するか決まっていない段階や、現在のMVVについて第三者の意見を聞いてみたいという相談でも構いません。
LSCへの発注ありきではなく、まず現在地と優先順位を整理します。
執筆者:長澤 邦明
ラテンサムライ株式会社 代表取締役。広告会社、Amazon Japanなどで20年以上、広告・営業・マーケティング領域に従事。ブランド・マネージャー1級、ウェブ解析士。