前回の記事では、ブランド・アイデンティティで定めた価値を、4P/4Cを使って商品・サービス、価格、流通、コミュニケーションへ具体化する考え方を紹介しました。
ただ、ブランドは言葉を決めただけでは完成しません。
消費者・顧客が実際に触れるのは、
商品。
Webサイト。
店舗。
広告。
SNS。
営業担当者。
問い合わせ対応。
購入後のサポート。
といった一つひとつの顧客接点です。
そこで何を感じ、どんな印象を持つのか。
その積み重ねによって、
「このブランドはこういうブランドだ」
というイメージが顧客の頭の中につくられていきます。
今回は、その接点で生まれるブランド体験について考えます。
1.ブランド体験とは何か
ブランド体験とは、顧客がブランドとのさまざまな接点を通じて感じる体験のことです。
例えばホテルなら、
予約サイトを見る。
問い合わせる。
チェックインする。
客室に入る。
食事をする。
スタッフと接する。
チェックアウトする。
この一連の体験すべてが、そのホテルというブランドへの印象をつくっています。
つまりブランド体験は、広告やロゴだけでつくられるものではありません。
商品、サービス、人、空間、言葉、デザイン、対応。
こうした要素が積み重なって、ブランドのイメージが形成されます。
2.ブランド・アイデンティティを「感じてもらう」
ブランド体験を考えるときに大切なのは、いきなり
「どんな体験にするか」
から始めないことです。
その前にあるのが、
「顧客からどう思われたいのか」
というブランド・アイデンティティです。
例えば、
「忙しい日常の中で、自分を取り戻せる時間を提供するブランド」
を目指しているとします。
それなのに、
店舗が騒がしい。
予約画面が分かりにくい。
スタッフの対応が慌ただしい。
という状態では、言っていることと体験が一致しません。
逆に、
空間。
サービス。
言葉遣い。
予約のしやすさ。
スタッフの振る舞い。
まで一貫していれば、説明されなくても、
「ここに来ると落ち着ける」
という印象が残ります。
ブランド体験とは、ブランド・アイデンティティを顧客が実際に感じられる状態にするための重要な手段です。
ただし、企業が意図した通りに伝わるとは限りません。
実際に形成されたブランド・イメージを確認しながら、体験やブランド要素を調整していくことが重要です。
3.ブランド・アイデンティティを伝える「刺激」を設計する
ブランド・アイデンティティを決めても、それだけで顧客に伝わるわけではありません。
企業が意図した価値や「こう思われたい」というブランド・アイデンティティを、顧客が実際に感じられる形へ落とし込む必要があります。
ブランド・マネージャー認定協会では、そのために顧客へ与えるものを**「刺激」として捉え、主にブランド要素とブランド体験**に分けて考えます。
ブランド要素とは、ブランドを表現する最小単位です。
代表的なものとして、
ブランド名。
ロゴ・マーク。
色。
キャラクター。
パッケージ・空間デザイン。
タグライン。
ジングル・音楽。
ドメイン(URL)。
匂い。
などがあります。
一方のブランド体験は、商品やサービス、Webサイト、店舗、営業、広告、サポートなど、顧客との接点を通じて実際に見る・使う・感じる体験です。
つまり、
ブランド・アイデンティティ
→ ブランド要素・ブランド体験という刺激
→ 顧客の中にブランド・イメージが形成される
という流れです。
ただし、ここで重要なのは、企業が意図した通りにブランド・イメージが形成されるとは限らないことです。
企業側では、
「こう思われたい」
と考えていても、顧客側では別の印象を持っていることがあります。
だからこそ、ブランド体験やブランド要素を設計して終わりではありません。
実際に顧客の中に形成されたブランド・イメージを確認し、ブランド・アイデンティティとのズレがあれば、商品、サービス、Web、言葉、営業、サポートなどの接点を見直していく必要があります。
ブランド・アイデンティティとブランド・イメージのズレを小さくし続ける。
この継続的な活動が、ブランディングです。

4.顧客接点は思っている以上に多い
ブランド体験を設計するときには、まず、
顧客がどこでブランドに触れているのか
を洗い出します。
例えばBtoB企業でも、
広告。
検索結果。
コラム。
会社サイト。
資料。
問い合わせフォーム。
営業メール。
商談。
提案書。
契約。
プロジェクト。
アフターフォロー。
まで、多くの接点があります。
企業側では、
「マーケティング」
「営業」
「制作」
「サポート」
と分けて考えていても、顧客から見ればすべて同じ会社との体験です。
だからブランドは、部署ごとではなく、
顧客から見える一つの体験
として考える必要があります。
5.「言っていること」と「やっていること」を一致させる
強いブランド体験には共通点があります。
それは、
企業が言っていることと、顧客が実際に感じることが一致している
ことです。
「シンプルで使いやすいブランド」
と言っているなら、
商品だけでなく、Webサイト、購入方法、説明、サポートまでシンプルである必要があります。
「親しみやすいブランド」
なら、
広告だけではなく、営業担当者や問い合わせ対応まで、そのブランドらしくある必要があります。
ブランド・アイデンティティが、
「こう思われたい」
だとすれば、
ブランド体験は、
実際にそう思ってもらうための積み重ね
です。
6.すべての接点を特別にする必要はない
ブランド体験を設計すると聞くと、
「すべての接点を特別にしなければ」
と思うかもしれません。
でも、重要なのはそこではありません。
大切なのは、
自社のブランド・アイデンティティを最も強く感じてもらうべき接点はどこか
を決めることです。
例えばホテルなら、
チェックイン。
客室に入った瞬間。
食事。
スタッフとの会話。
かもしれません。
BtoBの支援会社なら、
初回相談。
課題整理。
提案。
プロジェクト開始直後。
が重要かもしれません。
すべてに同じ力を使うのではなく、
「ここでブランドを感じてほしい」
という重要な接点を決める。
これもブランド体験設計の大切な考え方です。
7.ラテンサムライの場合、ブランド体験はどうつくるか
ラテンサムライでは現在、
「価値を磨き、伝わるブランドに翻訳する伴走者」
というブランド・アイデンティティを考えています。
大切なのは、この言葉を掲げることではありません。
実際の顧客接点で、
「本当にそういう会社だ」
と感じてもらえるかです。
例えば、相談を受けたとき。
すぐに広告やSEO、SNSといった施策を提案するのではなく、
まず、
「この会社の強みは何か」
「顧客は何に価値を感じているのか」
「本当に伝えるべきものは何か」
から整理する。
まだ言葉になっていない価値を見つけ、
ブランドの考え方に整理し、
そこからWebやクリエイティブ、マーケティングへつないでいく。
そして、戦略を渡して終わりではなく、
実行や改善まで一緒に伴走する。
こうした一つひとつの体験が積み重なって初めて、
「価値を磨き、伝わるブランドに翻訳する伴走者」
というブランド・アイデンティティが、顧客にとって実感のあるものになります。
つまり、
ブランド・アイデンティティは企業が決めるもの。
ブランド体験は、それを顧客に感じてもらうもの。
この二つが一致して、初めてブランドが顧客の中に形成されていきます。
8.Webサイトもブランド体験の一つ
今、多くの企業にとってWebサイトは重要な顧客接点です。
検索して会社を知る人。
SNSから訪れる人。
営業担当者から会社名を聞いて調べる人。
AIから候補として紹介され、確認しに来る人。
さまざまな人がWebサイトを見ます。
そのとき、
何をしている会社なのか分からない。
他社との違いが分からない。
実績が見つからない。
問い合わせ方法が分かりにくい。
という状態なら、それ自体がブランド体験です。
逆に、
ブランドの考え方。
提供する価値。
商品・サービス。
実績。
人。
コンテンツ。
が一貫して整理されていれば、
Webサイトを見るだけでも、
「この会社はこういう会社なんだ」
と感じてもらえます。
だからWebサイトは、
単なる会社案内ではなく、
ブランドを体験してもらう重要な顧客接点
でもあります。
まとめ|ブランドは、企業の意図とブランド・アイデンティティで、
「こう思われたい」
を定める。
その考え方を、ブランド要素やブランド体験という「刺激」に落とし込み、顧客との接点で届けていく。
そして、実際に顧客の中に形成されたブランド・イメージが、企業の意図したブランド・アイデンティティと一致しているかを確認する。
もしズレていれば、
商品。
サービス。
Webサイト。
言葉。
営業。
サポート。
などの接点を見直していく。
ブランドづくりは、一度決めて終わるものではありません。
ブランド・アイデンティティとブランド・イメージのズレを確認し、その差を小さくし続ける。
この継続的な活動そのものが、ブランディングです。
だからブランド体験も、単に「印象のよい体験をつくること」ではありません。
大切なのは、
自社が届けたい価値や「らしさ」が、顧客に意図した形で伝わっているか。
そこを確認しながら、ブランド要素とブランド体験を一貫して磨き続けることです。
ブランドは、企業が一方的につくるものではありません。
企業が意図するものと、顧客が実際に感じるものの間で育っていく。
この視点を持つことが、ブランド体験を考えるうえで重要です。
次回は「ブランドサイト」を考えます
ブランド体験を考えるとき、現在もっとも重要な顧客接点の一つがWebサイトです。
次回は、
ブランドサイトとは何か。企業サイトとの違いと、ブランドを伝えるための役割
について整理します。
ブランドを「言葉」で終わらせず、顧客体験まで一緒に考えます
ブランド・アイデンティティはあるけれど、実際の商品やWeb、営業活動までつながっていない。
接点ごとに伝えていることがバラバラになっている。
そんな段階からでも大丈夫です。
ラテンサムライでは、
ブランド戦略から、クリエイティブ、Web、顧客接点、実行・改善まで
分断せずに一緒に整理します。
気になるテーマがあれば、そのままご相談ください。