前回の記事では、セグメンテーションとターゲティングについて紹介しました。
市場をできるだけ細かく分け、その中から自社の価値を最も高く評価してくれる見込み客を選ぶ。
これがターゲティングの基本です。
ただ、ターゲットを決めただけでは、まだ「集団」のままです。
たとえば、
「可処分所得が高く、非日常の体験に価値を感じる都市生活者」
というターゲットが見えても、
その人が普段どんな生活をしていて、何に不満を感じ、何に心を動かされるのかまでは分かりません。
ペルソナは「架空の人物プロフィール」を作ることではない
そこで次に考えるのが、ペルソナです。
今回は、ターゲットを「一人の顧客」として具体化し、顧客理解を深めるためのペルソナの考え方を紹介します。
マーケティングの現場で、
「ペルソナを作りましょう」
という話はよく出ます。
すると、
- 35歳
- 東京都在住
- 会社員
- 年収700万円
- 趣味は旅行とカフェ巡り
といったプロフィールを作ることがあります。
もちろん、こうした情報も必要です。
ただ、それだけではペルソナとしては少し足りません。
僕が大事だと思うのは、
その人が、普段どんなことを考え、何に困り、何に価値を感じているのか。
そこまで想像できる状態にすることです。
ペルソナは、
属性を並べるためのものではなく、顧客を一人の人間として理解するためのもの。
そう考えると分かりやすいと思います。
1.ターゲットとペルソナは違う
前回の記事では、
セグメンテーション
→ 市場を分ける
ターゲティング
→ 自社の価値を最も高く評価してくれる見込み客を選ぶ
という流れを紹介しました。
ペルソナは、その次です。
例えば、
可処分所得が高く、非日常の体験に価値を感じる都市生活者
というターゲットを設定したとします。
これは方向性としてはかなり具体的です。
でも、まだ「集団」です。
その人は、
何歳くらいなのか。
平日はどんな仕事をしているのか。
休日はどう過ごしているのか。
何にストレスを感じているのか。
何にお金を使うのか。
どんな瞬間に幸せを感じるのか。
ここまで具体化すると、
「市場」だったものが、「一人の顧客」に変わります。
これがペルソナです。
2.なぜ「一人の顧客」にする必要があるのか
ターゲットが広いままだと、判断が抽象的になりやすいからです。
例えば、
「30〜40代の会社員向け」
と言われても、
どんなデザインがいいのか。
どんな言葉が刺さるのか。
どんなサービス体験を作るべきなのか。
なかなか判断できません。
一方で、
都内で働き、平日は忙しい。
休日は混雑した観光地より、少し知られていない場所へ行きたい。
モノよりも「人に話したくなる体験」にお金を使いたい。
という人が見えてくると、
何を提供すべきかが一気に考えやすくなります。
つまりペルソナは、
顧客の立場で考えるための“視点”をつくるもの
だと思っています。

3.年齢・職業・年収だけでは足りない
もちろん、
年齢。
職業。
年収。
家族構成。
居住地域。
といった基本属性も必要です。
ただ、それだけでは、
なぜその人が買うのか
までは見えてきません。
そこで重要になるのが、
- 好きなこと
- 嫌いなこと
- 不満に思うこと
- 不安に感じること
- 幸せを感じること
- 大切にしている価値観
- お金を使いたいもの
- 時間を使いたくないもの
といった情報です。
ブランド・マネージャー認定協会のテキストでも、ペルソナを考える際には「好きなこと」「嫌いなこと」「不満に思うこと」「幸せを感じること」などを考え、ブランドとの接点を探るとされています。
4.「典型的な平日」と「典型的な休日」を考える
僕は、ペルソナを考えるときに、
その人の一日の流れ
まで見るのはかなり有効だと思っています。
例えば、
朝何時に起きるのか。
通勤なのか、リモートなのか。
昼食はどうしているのか。
仕事が終わった後は何をしているのか。
休日は誰と過ごすのか。
どんな場所へ行くのか。
何を見て情報を集めるのか。
こうした生活の流れを見ると、
顧客との接点
が見えてきます。
協会のテキストでも、「典型的な平日」「典型的な休日」を描くことが、ブランド体験や顧客接点を考えるヒントになるとされています。
ここは、単なるプロフィールとの大きな違いです。
5.熱海の夜を例にすると、ペルソナはどう変わるか
前回の記事で紹介した「熱海の夜」のケースで考えてみます。
ターゲットとして考えたのは、
熱海の夜ならではの価値を高く評価してくれる人。
例えば、
- 可処分所得が高い
- 体験に4〜5万円使える
- 知らない人との会話を楽しめる
- 予定調和ではない体験が好き
- 癖のある店や人を面白がれる
- 東京からふらっと一泊することに抵抗がない
といった人です。
ここからペルソナにすると、もっと具体的になります。
例えば、
都内で働く30代後半。
平日は仕事が忙しく、週末は予定を詰め込みすぎたくない。
有名店や高級ホテルにも行くが、それだけでは少し物足りなくなっている。
旅行では観光名所を回るより、地元の店や人との偶然の出会いを楽しみたい。
SNS映えより、「昨日こんな人に会ってさ」と人に話したくなる体験を重視する。
こうなると、
単に「30代の高所得者」と見るより、
どんな価値を届けるべきか
がかなり見えてきます。
6.ペルソナは「広告を作るため」だけのものではない
ペルソナというと、
広告コピーやSNS投稿を作るためのもの、
というイメージもあります。
でも僕は、もっと広いと思っています。
例えば、
- 商品・サービスの設計
- Webサイト
- 接客
- 店舗体験
- コンテンツ
- 営業
- 顧客サポート
- ブランド体験
など。
すべての判断で、
「この人はどう感じるか」
を考えるために使えます。
だからこそ、ペルソナはマーケティング部門だけの資料ではなく、
ブランド全体の判断基準
になり得ます。
7.細かく作ればいいわけではない
一方で、ペルソナは細かく作りすぎればいいわけではありません。
例えば、
「38歳、子ども2人、犬を飼っていて、趣味はサーフィン」
と設定しても、
それが事業に関係ないのであれば意味はありません。
細かく設定しすぎると、
かえって見込み客の範囲を狭めてしまう
こともあります。
ブランド・マネージャー認定協会のテキストでも、ペルソナを具体的に描くことは重要である一方、細部にこだわりすぎると見込み客を狭めすぎるため注意が必要とされています。
なので、
その情報は、顧客理解や意思決定に本当に必要か。
という視点は常に持っておきたいです。
8.顧客を知らずに、ペルソナは作れない
もう一つ重要なのが、
会議室だけでペルソナを作らないこと。
です。
想像だけで作ると、
企業側に都合のいい顧客像になりやすい。
本当に必要なのは、
実際に顧客と話すこと。
営業現場の声を聞くこと。
店舗を見ること。
問い合わせ内容を見ること。
レビューを見ること。
場合によってはグループインタビューをすること。
協会のテキストでも、具体的なペルソナを描くには「顧客のことをどれだけ知っているか」が重要で、日々の顧客接点やグループインタビューなどが挙げられています。
僕自身も、人と話していると、
資料を見ているだけでは分からなかったこと
がかなり出てきます。
言葉の選び方。
ちょっとした違和感。
本人が意識していない不満。
こういうものは、実際に会話しないと見えないことが多いです。
9.ペルソナができると、「顧客の頭の中」を考えられる
ペルソナを具体化したら、その次に考えたいのが、
その人の頭の中で何が連想されているか
です。
例えば「熱海」と聞いたときに、
温泉。
昭和。
レトロ。
海。
旅行。
食。
混雑。
若者。
など、さまざまな言葉が浮かびます。
こうした連想のつながりを整理していくと、
顧客が今どのようにカテゴリーを捉えているのかが見えてきます。
協会のブランド構築ステップでは、ペルソナの連想を可視化する「連想マップ」を作り、そこからポジショニングへつなげていきます。
ここから先は、
「顧客の頭の中で、どこに位置づけられるか」
というポジショニングの話になります。
これは次の記事で扱いたいと思います。
10.ペルソナは「ブランドの都合」ではなく「顧客の現実」を見るためのもの
ペルソナを作る目的は、
自分たちの商品を売りやすくするためだけではありません。
むしろ、
企業側の思い込みから離れるため
にあると思っています。
「この人はこう思うはず」
ではなく、
本当にそうなのか。
日々どう暮らしているのか。
何に困っているのか。
何を楽しみにしているのか。
そこまで見る。
そうすると、
自社の価値をどんな形で届けるべきかが見えてきます。
まとめ|ペルソナは「プロフィール」ではなく「顧客理解」
ペルソナというと、
年齢。
年収。
職業。
趣味。
といったプロフィールを思い浮かべがちです。
でも、本当に重要なのはそこではありません。
その人がどんな毎日を送り、何に困り、何を大切にし、何に幸せを感じているのか。
そこまで具体的に考えることで、
ターゲットだった「集団」が、
一人の顧客
として見えてきます。
そして、その人の視点から、
商品。
サービス。
Web。
コンテンツ。
クリエイティブ。
顧客体験。
を考えられるようになります。
ペルソナは、
企業が顧客に近づくための道具
だと思っています。
顧客像がぼんやりしている段階でも大丈夫です
ターゲットは決めたけれど、まだ顧客像が見えていない。
自分たちの価値を誰が一番高く評価してくれるのか分からない。
そんな段階でも問題ありません。
ラテンサムライでは、
市場。
ターゲット。
ペルソナ。
ポジショニング。
ブランド・アイデンティティ。
までを一緒に整理しながら、
誰に、どんな価値を届けるべきか
を考えます。
気になるテーマがあれば、そのままご相談ください。