指名検索を増やしたい。
そう考えたとき、多くの企業では、テレビCMや動画広告、PRなど、まず認知を広げる施策が候補に挙がります。
実際、認知施策によってブランド名を知り、「もっと詳しく知りたい」と検索する人が増えれば、指名検索は伸びます。テレビCMの効果測定でも、放映後にブランド名で検索されたかどうかを重要な指標として見る考え方があります。
ただ、ここで一つ考えたいことがあります。
広告をたくさん出せば、指名検索は増えるのでしょうか。
必ずしも、そうとは限りません。
人がブランド名を検索するのは、そのブランドを見たからではなく、記憶に残り、何かのきっかけで「もう少し知りたい」「買ってみたい」「相談してみたい」と思ったときです。
つまり指名検索を増やすために考えるべきなのは、単純な広告量ではありません。
検索される前に、ブランドがどのように記憶されるか。
そこから考える必要があります。
指名検索とは、「すでに知っているブランドを、自分から探しに行く行動」です。
この記事では、指名検索とは何か。そして、検索される前から顧客の記憶に入り、「ブランド名で検索される存在」をどうつくるのかを考えます。
指名検索とは何か
指名検索とは、企業名、ブランド名、商品名、サービス名など、特定の名称を含めて検索することです。
例えば、
- 「ユニクロ ダウン」
- 「iPhone」
- 「サントリー ウイスキー」
- 「〇〇ホテル 沖縄」
- 「ラテンサムライ」
といった検索です。
一方で、
- 「ダウンジャケット おすすめ」
- 「スマホ 比較」
- 「ウイスキー ギフト」
- 「沖縄 ホテル」
- 「ブランディング会社」
などは、特定のブランドを前提としない一般検索です。
一般検索では、顧客はまだ複数の選択肢を探している状態です。
それに対して指名検索では、すでにそのブランドを知っていて、
「もう少し詳しく調べたい」
「価格を確認したい」
「公式サイトを見たい」
「口コミを見ておきたい」
といった段階に入っています。
つまり、検索する前から、すでに認知や関心が生まれているということです。
指名検索が増えると、比較のされ方が変わる
一般的なキーワードだけで集客していると、検索結果では競合と横並びになります。
「化粧水 おすすめ」と検索すれば、多くの商品が並びます。
「沖縄 ホテル」と検索すれば、複数の宿泊施設を比較します。
「ブランディング会社」と検索すれば、いくつもの支援会社が候補になります。
そこで比較されるのは、
価格、機能、口コミ、実績、デザイン、サービス内容、使いやすさ、ブランドへの信頼などです。
一方で、
「〇〇化粧水」
「〇〇ホテル」
「〇〇株式会社」
と名前を含めて検索してもらえれば、比較のスタート地点が変わります。
すでに「これについて知りたい」という関心があるからです。
もちろん、指名検索されたからといって必ず購入や予約、問い合わせにつながるわけではありません。
公式サイトを見て期待と違えば、選ばれないこともあります。
それでも、
「何か良いものはないか」と探される状態と、「あれを調べてみよう」と思い出してもらえる状態では、競争のルールが違います。
ブランドが強いとは、有名であることだけではありません。
必要になったときに、思い出してもらえること。
指名検索は、その状態が行動として表れた一つの例です。
SEOだけでは指名検索は生まれにくい
SEOは重要なマーケティング手段です。
人が何かを調べているときに、自社の記事や商品ページ、サービスページを見つけてもらうことができます。
ただし、SEOには前提があります。
すでに誰かが検索していることです。
まだ課題に気づいていない人。
なんとなく欲しいとは思っているけれど、具体的に調べていない人。
今すぐ商品やサービスを必要としていない人。
こうした人たちは、まだ検索画面にいません。
SEOや検索広告が得意なのは、すでに表れている需要を捉えることです。
だからこそ、ブランドを成長させるなら、「検索された後」だけではなく、「検索される前」まで考える必要があります。
Amazonで実感した「検索される前」の重要性
私はAmazon Japanで約8年間、企業の広告・マーケティング支援に携わってきました。
Amazon Adsというと、検索結果に表示されるSponsored Adsのような広告をイメージする方も多いと思います。
こうした広告は、すでに商品を探している人と出会うには非常に強力です。
一方で、実際のマーケティングでは、それだけで完結するわけではありません。
動画広告やディスプレイ広告などを使い、まだ具体的に商品を検索していない人へブランドを知ってもらうことも重要です。
そこで何度も感じたのが、
「検索された後」だけを最適化しても、未来の需要そのものは増えない
ということです。
ブランドを知らなければ、そのブランド名を検索することもありません。
だから、検索される前に知ってもらう。
記憶に残る。
必要になったときに思い出してもらう。
ブランド広告とパフォーマンス広告の両方に携わってきた経験から、今はこの「検索される前」の設計が、指名検索を考えるうえでも重要だと考えています。
まだ検索していない人の記憶に入る
人は、ある日突然ブランド名を検索するわけではありません。
その前に、何らかの接点があります。
SNSで投稿を見た。
動画を見た。
テレビCMを何度か目にした。
店頭で商品を見た。
記事を読んだ。
知人から名前を聞いた。
旅行先で利用した。
実際に商品を使って、良い体験をした。
こうした接点が積み重なり、少しずつブランドの記憶が形成されます。
そして、ある日ニーズが具体的になったとき、
「あの商品、なんて名前だったっけ」
「あのホテルをもう一度見てみよう」
「あの会社に相談してみよう」
という検索行動につながります。
つまり指名検索は、検索エンジンの中だけで生まれているわけではありません。
検索される前に、どれだけ人の記憶に入れているか。
ここからブランド構築は始まります。ブランド広告の重要な役割の一つは、この「検索される前」の状態をつくることです。

ブランド戦略で「思い出される理由」をつくる
では、どうすれば記憶に残るのでしょうか。
広告をたくさん出せば、それだけでブランドになるわけではありません。
まず整理すべきなのは、
「このブランドは何者なのか」
ということです。
誰に価値を届けるのか。
どんな課題や欲求に応えるのか。
なぜ自分たちがそれをやるのか。
競合とは何が違うのか。
どんな体験を提供したいのか。
どんなときに思い出してほしいのか。
こうしたブランドの軸が曖昧なままでは、Webサイト、広告、SNS、店頭、営業資料などで伝える内容もバラバラになります。
反対に、ブランド戦略が整理されていれば、さまざまな顧客接点に一貫した「らしさ」を通すことができます。
ブランド構築とは、ロゴやデザインをつくることだけではありません。
自社の中にある価値を整理し、「なぜ選ばれるのか」「どんなときに思い出されたいのか」を明確にすること。
それが、指名されるブランドの土台になります。
ブランド戦略をクリエイティブへ落とし込む
ブランド戦略を決めたら、次に考えるのが表現です。
戦略が正しくても、相手の心に届かなければ記憶には残りません。
ブランドの価値を、
どんな言葉で伝えるのか。
どんな映像で表現するのか。
どんなデザインにするのか。
どんなトーンでコミュニケーションするのか。
ここを考えるのが、クリエイティブ開発です。
その際、いきなり広告案や動画案を考えるのではなく、
- 誰に伝えるのか
- 何を感じてほしいのか
- 最も伝えるべきメッセージは何か
- どんなブランドとして記憶されたいのか
を整理します。
それをクリエイティブブリーフとして明確にしたうえで、コピー、映像、デザインなどへ落とし込んでいきます。
ブランド戦略が「何を伝えるか」を決め、クリエイティブが「どう心に残すか」をつくる。
この順番が重要です。
メディアは最後に考える
そして最後に考えるのが、メディアです。
「とりあえずSNSをやろう」
「YouTube広告を出そう」
「テレビCMをやろう」
と、最初から媒体を決めるのではありません。
まずブランド戦略がある。
次に、その戦略を表現するクリエイティブがある。
そのうえで初めて、
「この表現を、誰に、どこで届けるのが最も効果的か」
を考えます。
SNSが適しているブランドもあります。
動画広告が有効なケースもあります。
PR、イベント、店頭、OOHが強い場合もあります。
短期間で幅広い認知を形成したいのであれば、テレビCMが有効になることもあります。
大切なのは、
「テレビかデジタルか」ではありません。
まずブランド戦略を決める。
次に、その戦略をクリエイティブとして表現する。
そして最後に、その表現を届けるためのメディアを設計する。
この順番です。
検索広告で今ある需要を捉えながら、動画やテレビCMでまだ検索していない人にも知ってもらう。
SNSでブランドの世界観を伝え、興味を持った人が検索したときには、Webサイトや商品ページでより深く理解できるようにする。
それぞれの接点が一本につながることで、ブランドとマーケティングは機能します。
指名検索は、ブランドとマーケティングをつなぐ一つの指標
ブランドの価値を、指名検索だけで判断することはできません。
売上。
購入。
予約。
来店。
問い合わせ。
認知率。
好意度。
口コミ。
リピート。
見るべき指標は、事業によって異なります。
それでも、指名検索は興味深い指標です。
ブランド名や商品名を検索する人が増えているということは、
「知っている」
「覚えている」
「もう少し知りたい」
という人が増えている可能性があるからです。
特にブランド広告、PR、SNS、動画などを実施したあとに、指名検索がどう変化したかを見ることには意味があります。
指名検索の変化は、Google Search Consoleの「検索パフォーマンス」から、自社名やブランド名を含む検索クエリの表示回数・クリック数を見ることで確認できます。
ただし、数字だけを追うのではなく、
なぜ検索されたのか
まで考えることが大切です。
広告を見たのか。
SNSで知ったのか。
口コミなのか。
店頭で見たのか。
良い顧客体験が広がったのか。
指名検索はゴールではありません。
ブランドが人の記憶の中でどう育っているのかを見る、一つの手がかりです。
まとめ|検索される前から、ブランドの勝負は始まっている
今回のポイントを整理します。
- 指名検索とは、会社名・ブランド名・商品名などを含む検索のこと
- 指名検索が生まれる前には、ブランドとの何らかの接点がある
- SEOや検索広告は「検索された後」の需要を捉えることが得意
- ブランド戦略は「なぜ選ばれるのか」「どんなときに思い出されるのか」を整理する
- ブランド戦略の次にクリエイティブを開発し、最後にメディアを設計する
- 指名検索は、ブランドが人の記憶に残っているかを見る一つの手がかりになる
SEOや検索広告は、すでにニーズが具体化した人と出会うための強力な手段です。
一方で、ブランドを成長させるなら、今検索している人だけを見ていても十分ではありません。
まだ必要性を感じていない人。
今は購入を考えていない人。
将来、顧客になるかもしれない人。
そうした人の記憶に入り、必要になったときに思い出してもらう。
そのために、まずブランドをつくる。
ブランド戦略を表現するクリエイティブをつくる。
そして最後に、その表現を届けるメディアを選ぶ。
その積み重ねの先に、
「あのブランドを調べてみよう」
という指名検索があります。
SEOは「検索された後」の勝負です。
ブランドは、「何を検索するか」にまで影響する。
だからこそ、マーケティングを検索画面の中だけで考えない。
検索される前から、ブランドの勝負は始まっています。
「指名されるブランド」を、一緒に整理しませんか?
指名検索を増やすために、いきなり広告やSNSの施策を増やせばよいわけではありません。
まずは、自社が誰にどのような価値を届けるのか。そして、「なぜ選ばれるのか」を整理することが重要です。
ラテンサムライでは、ブランドやマーケティングの課題整理から、ブランド戦略、クリエイティブ開発、Web、広告、そしてメディア設計まで一緒に考えます。
「自社の強みをどう伝えればいいかわからない」
「もっと名前で選ばれるブランドにしたい」
そんな段階でも構いません。
気になるテーマがあれば、そのままご相談ください。コラムの内容に関連する相談も歓迎しています。まだ「何を相談すればいいのか」がまとまっていない段階でも、そのままお聞かせください。