ブランド戦略をつくったものの、Webサイトにどう反映すればいいのかわからない。
そんな悩みは意外と多いものです。
誰に、どんな価値を届けるのか。
競合ではなく、自社が選ばれる理由は何か。
どのようなブランドとして顧客に認識されたいのか。
そこまで整理できても、Webサイトをつくる段階になると、
「トップページには何を載せる?」
「会社の強みはどう表現する?」
「デザインはどうする?」
「SEOも考えた方がいい?」
と、一気に具体的な制作の話になります。
そして気づけば、ブランド戦略とは別の場所でWebサイトがつくられている。
これでは、せっかく整理したブランドの価値が、顧客へ十分に伝わりません。
Webサイトは、単なる会社案内でも、SEOのためだけの集客装置でもありません。
ブランドが約束する価値を、顧客が実際に理解し、感じ、次の行動へ進むための重要なブランド体験の一つです。
この記事では、ブランド戦略をWebサイトへ落とし込むときに、何をどの順番で考えればいいのかを整理します。

1.Webサイトは「ブランド戦略の翻訳」である
前回の記事「指名検索とは?『選ばれる理由』をつくるために考えること」では、ブランド戦略を、
誰に、どのような価値を届け、どのような存在として認識されたいのかを定め、その実現に向けて事業やマーケティング、コミュニケーションの方向性を一貫させる考え方
として整理しました。
では、それをWebサイトへ落とし込むとは、どういうことでしょうか。
単純にブランドカラーを使ったり、ロゴを大きく載せたりすることではありません。
ブランド戦略で決めたことを、
- どんな情報を載せるか
- どんな順番で伝えるか
- どんな言葉を使うか
- どんなビジュアルで表現するか
- どんな体験をしてもらうか
へ翻訳することです。
つまりWebサイト制作は、
「何をつくるか」より先に、「何を伝えるべきか」を考える必要があります。
ブランド・マネージャー認定協会のテキストでも、ブランド・アイデンティティは、顧客に「どう想起されたいか」を表す旗印として整理されています。
Webサイトも、その旗印から外れないように設計する必要があります。
2.最初にデザインから考えない
Webサイトのリニューアルでよくあるのが、
「今のサイトが古い」
「もっと今っぽいデザインにしたい」
「競合のサイトの方がかっこいい」
というところから始まるケースです。
もちろん、デザインは重要です。
ただし、デザインを変えるだけではブランドは変わりません。
例えば、高級感のあるデザインに変えても、文章では価格の安さばかりを訴えていたら、ブランドとしての一貫性はありません。
親しみやすいブランドを目指しているのに、問い合わせフォームが複雑で、企業都合の情報ばかり並んでいれば、顧客が受け取る印象も変わります。
だから、デザインを決める前に、
「このサイトを見た人に、最終的に何を理解してほしいのか」
を整理する必要があります。
サイト制作会社へ「おしゃれなサイトをお願いします」と依頼する前に、ブランド戦略をWeb上の体験へ翻訳する。
この順番が重要です。
3.まず「誰に、何を伝えるか」を決める
ブランド戦略をWebサイトへ落とす最初のステップは、ページ構成を考えることではありません。
まず、
誰に、何を伝えたいのか
を整理します。
例えば、ある企業に次の3つの強みがあったとします。
- 50年以上蓄積した技術力
- 顧客ごとの柔軟な対応力
- 納品後まで続くサポート
全部大切だからといって、トップページに同じ強さで並べればいいとは限りません。
顧客が最も価値を感じるものは何か。
競合と比較したときに、選ぶ理由になるものは何か。
そして、自社として最も大切にしたい価値は何か。
優先順位をつける必要があります。
ブランド・アイデンティティを考える際にも、顧客の期待、自社の能力、自社の意志を踏まえて「どう思われたいか」を明確にする考え方があります。
Webサイトでも同じです。
情報を増やす前に、
「この会社は○○な会社だ」
と何を持ち帰ってほしいのか。
まずそこを決めます。
ラテンサムライの場合
例えばラテンサムライ株式会社では、単に、
「マーケティング支援会社です」
と伝えることを目指していません。
現在の立ち位置は、
「挑戦する企業のブランドとマーケティングに伴走するパートナー」
です。
そのうえで、ブランド戦略、マーケティング戦略、クリエイティブ、Webマーケティングまでを分断せずに支援することを、Webサイトでも一貫して伝えています。
何でもできる会社に見せるのではなく、
企業の価値を整理し、それを顧客にとっての「選ぶ理由」に変えていくこと
を中心に置く。
それによって、サイト内で何を強く伝えるべきかも判断しやすくなります。
4.ブランドの「選ばれる理由」をサイト構造にする
次に考えるのが情報設計です。
ここでいう情報設計とは、単にページを分類することではありません。
顧客が、
知る → 理解する → 興味を持つ → 比較する → 信頼する → 行動する
という流れの中で、必要な情報へ自然にたどり着けるようにすることです。
例えばトップページで、
「私たちは○○を大切にしています」
と宣言するだけでは、顧客はなかなか信用してくれません。
その価値を裏づける、
- 商品・サービス
- 技術や仕組み
- 実績
- 導入事例
- 顧客の声
- 開発背景
- 社員や経営者の考え
- FAQ
- 会社の歴史
などが必要になります。
つまり、
ブランドの約束を、Web上の一次情報で証明していく。
これが重要です。
「品質にこだわっています」と書くなら、何をどうこだわっているのか。
「顧客に寄り添います」と書くなら、具体的にどう寄り添ってきたのか。
「専門性があります」と言うなら、その専門性が伝わる情報があるのか。
ブランド戦略をWebに落とすとは、抽象的な言葉を並べることではありません。
ブランドが約束している価値を、顧客が確認できる情報へ変えていくことです。
ラテンサムライの場合
ラテンサムライでは、トップページで考え方だけを語るのではなく、
- LSC PARTNER
- LSC BRANDING
- LSC GROWTH
というサービス構成を置いています。
これは単なるサービス分類ではありません。
課題や優先順位の整理から伴走する。
ブランドの価値や「らしさ」を整理する。
それをWebマーケティングや実行へつなげる。
という会社の考え方そのものを、サービス構成にも反映しています。
つまり、
ブランドの考え方を言葉で宣言するだけでなく、商品やサービスの構造そのものでも証明する。
これもブランド戦略をWebサイトへ落とし込む方法の一つです。
5.コピーは「言いたいこと」ではなく「伝わること」から考える
ブランド戦略が整理されていても、Webサイトの言葉にすると急に抽象的になるケースがあります。
「未来を創造する」
「新しい価値を提供する」
「お客様に寄り添う」
もちろん、それ自体が悪いわけではありません。
ただ、それだけでは、
「結局、何をしてくれる会社なのか」
が分からないことがあります。
ブランドの言葉は、格好良ければいいわけではありません。
顧客が自分との関係を理解できる必要があります。
だからコピーを考えるときは、
企業が言いたいこと × 顧客が知りたいこと
の両方を見ます。
例えばブランドコンセプトやタグラインを掲げるなら、そのすぐ近くに、
「誰に、何を提供しているのか」
が理解できる説明を置く。
企業の想いを語るなら、
「それによって顧客にどんな価値が生まれるのか」
までつなげる。
ブランドの世界観と分かりやすさは、どちらか一方を選ぶものではありません。
ブランドらしく、しかも伝わる。
その両立を目指します。
ラテンサムライの場合
ラテンサムライのタグラインは、
「社外なのに、身内以上。」
です。
この言葉は、単に印象に残るコピーを目指してつくったものではありません。
外部の支援会社でありながら、クライアントの中に入り込み、課題整理から実行まで当事者意識を持って伴走する。
その仕事の姿勢を一言にしています。
ただし、タグラインだけを見ても、
「具体的に何をしてくれる会社なのか」
までは分かりません。
だからWebサイトでは、ブランド・マーケティング戦略の整理から、クリエイティブやWebマーケティングの実行まで支援することを、その後の情報で説明します。
短い言葉でブランドの印象をつくり、その意味を具体的な情報で裏づける。
コピーも単独で存在するのではなく、サイト全体の情報設計の中で機能させる必要があります。
6.デザインは「ブランドらしさ」を体験に変える
ここで初めて、デザインの話になります。
色。
フォント。
写真。
イラスト。
余白。
動き。
ページ全体のテンポ。
これらは単なる装飾ではありません。
すべて、顧客がブランドをどう感じるかに影響します。
ブランド・マネージャー認定協会のテキストでは、ブランド要素やブランド体験は、顧客の中でブランドを思い起こすきっかけとなり、ブランドイメージを形成していくものとして整理されています。
また、オンラインでの顧客接点が増える中で、オンラインでのブランド体験も重要な視点とされています。
Webサイトも、その重要な接点の一つです。
高級ブランドなら、高級に「見える」だけでは足りません。
ページの読みやすさや情報の見せ方まで含めて、落ち着いた体験になっているか。
革新的なブランドなら、奇抜なデザインにすることが目的ではなく、
「この会社は新しいことをやっていそうだ」
と自然に感じてもらえるか。
ブランド戦略をデザインへ落とすというのは、
戦略で決めたブランドらしさを、視覚と体験に変えること
です。
7.Webサイトは企業がコントロールできる重要な顧客接点
SNS、広告、口コミ、動画、PR。
今は企業と顧客の接点が非常に増えています。
一方で、すべての接点を企業が完全にコントロールできるわけではありません。
SNSでは第三者の投稿もあります。
口コミサイトには顧客の評価が並びます。
AIによる情報探索では、自社以外の情報も参照されます。
だからこそ、自社のWebサイトが持つ意味は小さくありません。
自分たちは何者なのか。
何を提供しているのか。
なぜそれをやっているのか。
どんな実績があるのか。
これらを企業自身の言葉で整理できる場所だからです。
デジタル時代は情報量が増え、企業からの発信が届きにくくなる一方で、デジタルとリアルを組み合わせた顧客体験の設計や、顧客によるブランド評価の把握も重要になっています。
つまりWebサイトは「作ったら終わり」の会社案内ではありません。
企業が自分たちの価値を蓄積し、ブランドを育て続ける場所です。
8.ブランドサイトと集客サイトを分けすぎない
ここでよくあるのが、
「ブランドサイト」と「集客サイト」を別物として考えすぎることです。
ブランドサイトは世界観を見せる。
集客サイトはSEOや広告で問い合わせを取る。
確かに、ページによって役割は違います。
ただ、顧客から見れば同じ企業です。
検索から訪れたページだけ急に営業色が強かったり、広告LPだけ別のブランドのようになったりすれば、体験にズレが生まれます。
反対に、世界観だけを大切にして、商品情報や料金、導入方法が見つからないサイトも困ります。
だから、
ブランドか、集客か
ではありません。
ブランド戦略を土台にして、
顧客が知りたい情報を分かりやすく届け、そのうえで行動につなげる。
この両方が必要です。
これは以前の記事「ブランディングとWebマーケティングを分けてはいけない理由」でもお伝えした考え方です。
ブランドは「選ぶ理由」をつくり、Webマーケティングはその価値と顧客が出会う接点をつくる。
Webサイトは、その二つが交わる場所でもあります。
9.SEOは「何を伝えるか」を決めた後に考える
Webサイトをつくると、SEOも重要になります。
ただ、SEOからブランドを逆算するのはおすすめしません。
「このキーワードの検索数が多いから、このページを作ろう」
だけでサイトを増やしていくと、顧客を集めることはできても、
「この会社は何が強いのか」
が分からないサイトになる可能性があります。
まずブランド戦略がある。
そのブランドが提供する価値がある。
その価値を必要としている顧客がいる。
そのうえで、
顧客はどんな言葉で検索しているのか
を考えます。
この順番です。
だからSEOはブランド戦略と対立するものではありません。
ブランドが伝えたい価値と、顧客が探している情報をつなぐ役割を持っています。
そして記事や事例、FAQなどのコンテンツを積み重ねていけば、
検索流入を増やすだけでなく、
「この会社はこのテーマに詳しい」
という認識も少しずつ形成できます。
Webマーケティングについては「Webマーケティングとは?顧客との接点を設計すること」でも詳しく解説しています。
10.Webサイトは公開してからブランド資産になっていく
Webサイトのリニューアルでは、「公開日」がゴールになりがちです。
でも、本当はそこからです。
どのページが読まれているのか。
どんな検索から訪問されているのか。
どんなコンテンツを読んだ人が問い合わせているのか。
顧客からどんな質問を受けているのか。
営業現場では何が伝わりにくいのか。
こうした情報を見ながら、Webサイトを更新していきます。
新しい事例を追加する。
顧客の疑問を記事にする。
サービス説明を分かりやすくする。
ブランドの考え方を発信する。
そうして情報を蓄積していくと、Webサイトは単なる制作物ではなくなります。
企業がこれまで何を考え、何をしてきたのかが蓄積されたブランド資産
になっていきます。
ラテンサムライの場合
ラテンサムライでも、Webサイトを公開した時点で完成したとは考えていません。
現在もコラムを継続的に更新しながら、Search Consoleで、
「どんな検索語で表示されているのか」
「どんなテーマにGoogleが反応し始めているのか」
「どの記事から次の記事へつなぐべきか」
を確認しています。
例えば、
ブランド × Web
というテーマへの検索反応が見え始めたら、その周辺に、
ブランド戦略、
指名検索、
Webサイト、
コンテンツ、
SEO
といった情報を増やし、関連する記事同士もつないでいきます。
検索順位を上げるためだけに記事を増やしているわけではありません。
ラテンサムライは何を考え、どんな領域を得意としている会社なのか。
それをWeb上に少しずつ蓄積していくことも目的です。
これは、まさに自社でも試している取り組みです。
Webサイトは完成させるものではありません。
ブランドと一緒に育てていくものです。
まとめ|ブランド戦略を「伝わる体験」に変える
ブランド戦略をWebサイトへ落とし込むとき、大切なのはデザインから始めないことです。
今回のポイントを整理すると、
- ブランド戦略で「誰に、どんな価値を届けるか」を明確にする
- 最も伝えたい「選ばれる理由」に優先順位をつける
- ブランドの価値をWebサイトの情報構造へ落とす
- 抽象的な強みを、事例や実績などの一次情報で裏づける
- コピーではブランドらしさと分かりやすさを両立する
- デザインによってブランドらしさを体験へ変える
- ブランドと集客を分断しない
- SEOはブランド戦略の後に、顧客との接点として設計する
- 公開後も情報を蓄積し、Webサイトをブランド資産として育てる
という流れになります。
Webサイトをリニューアルするとき、
「どんなサイトにするか」
から始める前に、一度、
「このWebサイトを通じて、顧客に自分たちをどのような存在として理解してほしいのか」
を考えてみてください。
その答えがなければ、どれだけ美しいWebサイトをつくっても、ブランド戦略とはつながりません。
反対に、そこが明確であれば、
コピーも、
デザインも、
コンテンツも、
SEOも、
何を優先すべきか判断しやすくなります。
ブランド戦略を、顧客に伝わる体験へ変える。
それが、ブランドとWebサイトをつなぐということだと思います。
ブランド戦略とWebサイトがつながっているか、一度整理してみませんか?
「ブランド戦略はあるけれど、Webサイトに反映できていない」
「サイトをリニューアルしたいが、何から整理すればいいかわからない」
「SEOや広告はやっているものの、自社らしさがうまく伝わっていない」
そんな段階でも構いません。
ラテンサムライでは、企業のブランド戦略や提供価値を整理したうえで、Webサイト、コンテンツ、SEOなどの顧客接点まで一貫して考えます。
何をつくるかを決める前に、今どこに課題があるのかから一緒に整理します。