企業ブランド広告と獲得広告は、どちらを優先すべきなのでしょうか。
検索広告やEC広告は、クリック数やコンバージョン、CPA、ROASが見えやすく、短期的な成果につながりやすい施策です。一方で、ブランド広告には、認知や記憶、信頼、そして指名検索を育てる役割があります。
僕はAmazon Japanで7年以上、広告ビジネスに携わってきました。そこでは、Sponsored Adsのような獲得施策だけでなく、動画広告やDSPなどを使ってブランド認知や将来の需要を育てていく重要性も日々感じていました。
だから今、ラテンサムライでブランディングとWebマーケティングの両方を事業の柱にしていることにも、かなりつながっています。
本記事では、ブランド広告と獲得広告の違いを整理しながら、なぜ両方を組み合わせることが重要なのか、指名検索やROASとの関係も含めて解説します。
ブランド広告とは
ブランド広告とは、商品をその場で購入してもらうことだけを目的とするのではなく、
- ブランド認知
- ブランド想起
- 好意
- 信頼
- 選好
- 購買意向
などを高めることを目的とする広告です。
たとえば動画広告やテレビCM、ディスプレイ広告、ストリーミングTV広告などが代表的です。
Amazon Adsでも、ブランド認知を独立した広告目的として位置づけており、Amazon Brand Liftでは認知、態度、選好、好意、意向、広告想起などの変化を測定できます。日本ではAmazon DSPを利用する広告主向けにも提供されています。
重要なのは、ブランド広告が単に「たくさんの人に見せる広告」ではないという点です。
目的は、
そのブランドを知ってもらい、覚えてもらい、次に選択肢へ入れてもらうこと
にあります。
獲得広告とは
一方、獲得広告は、問い合わせや購入など具体的な行動を促すことを重視します。
代表的な指標は、
- コンバージョン数
- CPA
- CVR
- 売上
- ROAS
などです。
検索広告やショッピング広告、ECモール内の広告などは、獲得目的で使われることが多い施策です。
Amazon Adsのパフォーマンス広告についても、検索キーワードや商品との関連性を利用し、購入意欲のある顧客を商品発見から購入へ導く仕組みが説明されています。
つまり、シンプルに整理すると、
ブランド広告=選ばれる前提をつくる
獲得広告=今ある需要を成果につなげる
という違いがあります。
ブランド広告と獲得広告の違い
| 項目 | ブランド広告 | 獲得広告 |
|---|---|---|
| 主な目的 | 認知・想起・好意・信頼 | 問い合わせ・購入 |
| 主な対象 | 潜在層〜準顕在層 | 顕在層 |
| 主なKPI | 認知率、想起、好意、指名検索など | CV、CPA、CVR、ROAS |
| 時間軸 | 中長期 | 短期 |
| 主な役割 | 選ばれる理由を育てる | 需要を成果へ変える |
どちらが優れているという話ではありません。
役割が違います。
なぜ獲得広告だけでは限界があるのか
検索広告やEC広告は非常に強力です。
しかし、その多くは、
すでに何かを探している人
を対象にしています。
たとえば「法人向け英会話」「東京 パーソナルジム」「化粧水 敏感肌」と検索している人は、すでに一定のニーズを持っています。
獲得広告は、その需要を競合より効率よく獲得することに適しています。
ただし、競合各社が同じ顕在層を狙えば、
- CPCが上昇する
- CPAが悪化する
- 値引き競争が起きる
- 比較されやすくなる
という状況が起こります。
また、検索広告だけでは、
「そもそも、そのブランド名を検索する人をどう増やすのか」
という問題は解決できません。
ここにブランド広告の役割があります。
指名検索は、検索画面の中だけでは生まれない
ブランド名を直接検索する「指名検索」は、強い購買シグナルの一つです。
しかし、人は何のきっかけもなく突然ブランド名を検索するわけではありません。
それ以前に、
- 広告を見た
- SNSで知った
- 知人から聞いた
- 店頭で見た
- 商品を使った
- メディアで見た
といった接点があります。
こうした接触が積み重なり、
「そういえば、あのブランド」
という記憶が形成されます。
ブランド広告の重要な役割の一つは、この「検索される前」の状態をつくることです。
ブランドが強いと、獲得施策にも影響する
同じような商品が検索結果に並んだ場合、
A社:初めて見るブランド
B社:以前から知っていて、良い印象を持っているブランド
であれば、B社が選択肢に入りやすくなることは想像しやすいでしょう。
ブランド認知や信頼は、
- クリック
- 比較検討
- 購入
- リピート
といった後工程にも影響します。
つまりブランド構築は、パフォーマンスマーケティングと別世界の活動ではありません。
獲得効率を支える土台でもある
と考えることができます。
Amazon Adsの現場でも「売上だけ」を見ていたわけではない
筆者はAmazon Japanの広告部門で7年以上、企業の広告支援に携わってきました。
AmazonにはSponsored Adsのように、商品を探している顧客へ効率的に届ける広告があります。
一方で、ブランド担当者に対しては、Amazon DSPや動画広告などを組み合わせ、
- ブランド認知を広げる
- 新しい顧客層へ届ける
- ブランドを記憶してもらう
- 将来的な指名検索や購入につなげる
という上流施策も提案していました。
Amazon DSPは、ブラウジング、ショッピング、ストリーミングなどのシグナルを活用しながら、ディスプレイ、動画、ストリーミングTVなど幅広いフォーマットで広告配信できます。
またAmazon Adsは現在、ストリーミングTV広告をブランド認知や新規顧客へのリーチにも活用できる広告商品として展開しています。
ここから分かるのは、
データやターゲティングが高度になれば、ブランド広告が不要になるわけではない
ということです。
むしろ、
「今買いそうな人を効率的に獲得する施策」
と
「将来選んでもらうためのブランドを育てる施策」
をどう組み合わせるかが重要になります。
Performance Marketingは需要を捕まえ、Brandは需要を育てる
ブランド広告と獲得広告の関係を、当社では次のように考えています。
Performance Marketingは、需要を捕まえる。
一方、
Brandは、需要と「選ぶ理由」を育てる。
たとえば、
ブランド広告
↓
認知・記憶
↓
興味・信頼
↓
指名検索
↓
Webサイト・EC流入
↓
問い合わせ・購入
↓
良い顧客体験
↓
口コミ・リピート
↓
さらにブランドが強くなる
という循環です。
この循環が回り始めると、Web集客で獲得した顧客体験そのものが、次のブランド資産になります。
ブランディングとWebマーケティングは「両輪」で考える
ラテンサムライでは、ブランディングとWebマーケティングを別々のものではなく、企業成長の両輪として捉えています。
ブランディングは、
選ばれる理由をつくり、育てること。
Webマーケティングは、
その価値を必要としている人へ届けること。
どれだけ優れたブランドでも、必要な人に届かなければ事業は伸びません。
一方、Web集客だけを強化しても、他社との明確な違いがなければ、価格や広告費の競争になりやすくなります。
だからこそ、
選ばれる理由をつくる。
必要な人に届ける。
良い顧客体験をつくる。
そして、信頼され、選ばれ続ける。
この循環を設計することが重要です。
ブランド広告と獲得広告、どちらから始めるべきか
ここまで読むと、
「では予算が限られている企業は、両方同時にやらないといけないのか」
と思うかもしれません。
必ずしもそうではありません。
重要なのは、自社の現在地です。
すでに一定のブランド認知があり、検索需要も十分に存在するなら、獲得施策を強化することで成長できるケースがあります。
逆に、
- 広告を出してもCPAが上がり続ける
- 競合との違いが伝わらない
- 指名検索が少ない
- 比較されると価格で負ける
- 新規顧客の獲得が広告頼みになっている
という状況なら、ブランド側の課題を見直す必要があります。
「広告を増やすか、ブランドをつくるか」という二者択一ではなく、
今、自社の成長を止めているのはどこなのか
から考えることが大切です。
まとめ|短期の売上と、長期の「選ばれる理由」を両方育てる
獲得広告は、短期的な売上をつくる上で非常に重要です。
しかし、今ある需要を獲得するだけでは、競争が激しくなるほど効率には限界が生まれます。
一方、ブランド広告は、
- 認知
- 記憶
- 信頼
- 指名
- 選好
を育て、将来の顧客との関係をつくります。
だから、
売る力だけでも足りない。
選ばれる力だけでも足りない。
ラテンサムライは、
選ばれる理由をつくる。必要な人に届ける。
この両方を一つの戦略としてつなぐことが、企業の持続的な成長につながると考えています。
ブランドとマーケティングを、一度整理してみませんか?
「集客はしているけれど、価格比較になってしまう」
「自社の強みをうまく言葉にできていない」
「ブランドを見直したいが、事業成果にどうつなげればいいか分からない」
そんな状態であれば、施策を増やす前に、一度全体を整理するところから始めてもいいかもしれません。
ラテンサムライ株式会社では、企業の想いや強み、顧客価値を整理するところから、ブランド戦略、マーケティング戦略、Web、クリエイティブ、実行・改善まで一緒に考えます。
コラムの内容に関連する相談も歓迎しています。まだ「何を相談すればいいのか」がまとまっていない段階でも、そのままお聞かせください。